総合学科の特色

□  総合学科設置の経緯
  総合学科高校は、生徒の個性の多様化や社会の変化に柔軟に対応するため、「後期中等教育と高等教育」、「生涯学習社会への対応」の2点から現状分析が行われ提言された。
  平成4年6月の第一次報告から平成5年2月の第四次報告で、総合学科という名称、総合学科設置の意義、教育課程の基本的考え方、望まれる履修形態等、総合学科全般にわたる詳細な具体像の報告がなされた。平成5年3月10日、高等学校設置基準の一部改正により、高等学校の3番目の学科として省令により位置づけられた。

□ 総合学科を新たに設置する必要性は何か
  『普通科では画一的に進学を意識するため生徒の多様な能カ・適性に十分対応できず、職業科では就職する者を主体とした教育が行われているため進学希望者への対応が不十分である』、そのため、『高校教育に適応できず不本意入学者や中途退学者が少なからずいる』。以上のことより、今後の高等学校の在り方は、ア 量的拡大から質的拡大へ、イ 形式的平等から実質的平等へ、ウ 偏差値偏重から個性尊重・人間性重視へ、と視点を転換することが重要とした。このような視点に立ち、生徒の個性を尊重した教育を推進する観点から、これまでの普通科と専門学科の2学科の区分を見直し、生徒の学習の選択幅を拡大することができるよう、普通教育及び専門教育の選択履修を旨とした総合的に施す学科を設置すべきとした。
 
□ 総合学科設置の意義は何か
  1. 既存の学科の枠にとらわれず、所要の条件整備と相まって、単位制・学校間連携等の諸制度を大胆に活用するなど、思い切った教育課程の弾力化を容易にする。
  2. 推薦入学等多様な選抜方法の工夫や履修科目の自由な選択を通して、生徒の能力や適性を多面的な角度から評価が行われ、偏差値による高等学校間の序列意識を打破する契機となる。
  3. 様々な分野の基礎・基本を学習するのに適切な科目が多数開設されるため、地域の生涯学習機関としての役割を果たす。
  4. 既存の学校・学科の教育改革の努力を促進し、多様な生徒の多様な能力・適性等に対応できるようになっていく。
  5. 学歴社会の弊害の除去や過度の受験戦争を緩和し、総合学科が高等学校教育改革のパイオニア的役割を果たす。
□ 総合学科の教育の特色は何か
  学校教育では、(1)「心豊かで主体的・創造的に生きていくことができる資質や能力を確実に身につけ、社会生活で活用し環境に柔軟に対応できる人間の育成」、(2)「仕事を創造的に遂行し、生活を豊かにしていくことができる人間の育成」である。このことから、総合学科では、(1) 将来の職業選択を視野に入れた自己の進路への自覚を深めさせる学習を重視する(2) 生徒の個性を生かした主体的な学習を通して、学ぶことの楽しさや成就感を体験させる。
  このことから、総合学科の教育は生徒自身が自己の進路に対する意識を深化させるような科目を開設し、さらに、様々な進路を視野に入れたガイダンス機能を充実したものにする。教育課程の編成では、生徒の多様な要求に応えるため幅広い選択科目を開設し、生徒の主体的な選択、実践的・体験的な学習形態を重視しなければならない。生徒の多様な能力・適性に対応した柔軟な教育を行なうのが総合学科の教育の特色である。
 
□ 総合学科はどのような生徒の入学を期待するのか
  今日技術革新の進展に伴い産業・就業構造が大きく変化しため、若者の職業選択が先送りされることが多くなってきた。従って、中学卒業時に将来の進路の明確な見通しを持って卒業することが困難な状況にある。そこで、高等学校は様々な活動を通して自己の能カ・適性を見いだすための積極的な活動の場とすべきである。
 以上の観点から総合学科に進学を希望する生徒像は、以下のとおりである。
 
  1. 総合学科を置く高等学校の特色に魅カを見いだし、そこでの学習成果を自己の将来の進路選択に結びつけようとする生徒。
  2. 高等学校卒業後は就職を希望しているが中学校卒業時には複数分野に魅力を感じており、進路選択を総合学科での学習やガイダンスに期待している生徒。
  3. 高等学校卒業後は上級学校に進学し専門的技術者等になりたいと考えているが、自己の能力・適性を総合学科の幅広い分野の学習を通して見極めたいと考えている生徒。
  4. 高等学校卒業後は、就職あるいは進学するかなど将来の進路を適切に選択するために、総合学科における学習を通して自己の能カ・適性を見極め、また、働くこと・学ぶことの意義や目的を理解した上での自己実現を望んでいる生徒。
□ 総合学科と従来の学科の違い
  総合学科では、画一的な従来の教育の見直しから個々の生徒の適性・能力に柔軟に対応するために開設された幅広い選択科目(普通科目と工業・農業・商業等の専門科目)を、生徒が各々の興味・関心・進路の希望等により主体的に選択して時間割が決定される。よって、極端な場合には総合学科に所属する生徒の時間割は生徒全員が異なる場合もあり得る。
  総合学科では、学年による教育課程の区分を設けない課程(すなわち単位制)とすることを原則とし、原則履修科目の「産業社会と人間」を含め専門教育に関する教科・科目を合わせて25単位以上設置する。生徒は普通教育・専門教育の両区分から主体的に履修することができる。
 
□ 総合学科の教育の特色を発揮するために活用される制度にはどのようなものがあるか
 総合学科では以下のような諸制度を活用しその特色の具現化を図っている。
  1. 多様な選抜方法の工夫
  2. 文化・スポーツ活動、ボランティア活動等の実績を重視して、面接で生徒のスピーチ等プレゼンテーションを実施することで、狭義の学力に偏重しない選抜方法を導入している。
  3. 単位制による教育課程の編成
  4. 学年ごとでなく、卒業までに所要の単位数を修得すれば、卒業を認定する単位制による教育課程の編成を原則としている。
□ 学校間連携の推進
 可能な限り多様な教科・科目を開設する必要性に応えて、学校間連携を実施している。
  1. 専修学校や技能審査等の成果の単位認定
  2. 専門学科への転学の配慮
□ 転編入学についての積極的受け入れ
 全国の各総合学科高等学校が上記の制度をすべて活用しているわけではない。総合学科としての特色を発揮するために、従来の高等学校にはなかった柔軟、かつ大胆な制度運用への取り組みが実施される。
 
□ 総合学科と類型制、コース制との違いは何か
  総合学科では、生徒の多様な能力・適性に柔軟に対応するため幅広い選択科目を開設し、これらの選択科目の開設にあたっては体系性、専門性において相互に関連する普通科目・専門科目を総合選択科目群(いわゆる系列:後述)としてまとめて開設している。生徒はこの科目群を目安に自己の輿味・関心・進路希望等に基づき、履修科目の選択を行う。
  この科目選択は基本的には「科目」選択であり「科目群」選択ではない。つまり、出来合いのコースメニューを選択するのではなく、多様な科目の中から生徒自ら選択して自分専用のコースメニューを組むことになる。この点において「類型」を選択する類型制とも、「コース」を選択するコース制とも異なるものである。
  生徒は様々な科目群からの科目選択も可能であり、特定の総合選択科目群にのみ所属するものではない。この点において小学科制とも本質的に異なるのである。
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